投球障害

投球障害の中でも最も多い障害(インピンジメント症候群)

関節が衝突をおこす「インピンジメント」

肩関節障害の代表的な疾患としてインピンジメント(衝突)という症状があります。
インピンジメントとは関節が衝突をおこし痛みとして出てきます。

インピンジメントは疼痛抑制だけでは改善しないことが多く、肩甲胸郭関節・体幹・股関節の機能障害を見つけアプローチしていかないと改善しないケースが多いと思います。

インピンジメントの症状は

肩を上げていくとき、ある角度で痛みや引っかかりを感じ、それ以上に挙上できなくなる症状の総称です。悪化するとこわばりや筋力低下なども伴い、夜間に痛みを訴えることもあります。
肩を挙上するとき、あるいは挙上した位置から下ろしてくるとき、ほぼ60-120°の間で特に強い痛みを感じることがあります。
骨形態の個人差として肩峰がもともと下方に突出している場合や加齢変化として肩峰下に骨棘ができた場合のほか、投球動作など腕をよく使うスポーツ選手にも発症します。

なぜインピンジメントを起こすのか?

少し専門的な話になりますが…少しでも知識に入れてもらいたいので!!

上腕を外転する課程で、上腕骨と肩峰の間に腱板の一部や肩峰下滑液包などが挟み込まれ、繰り返して刺激が加わると滑液包に浮腫や出血が起こります。安静にするとこの変化は正常に戻り症状は軽快しますが、動作の反復によっては症状の再燃を繰り返して慢性化します。
進行すれば、時に腱板の部分断裂となったり、肩峰下に骨の棘ができたりして痛みがなかなかとれなくなることもあります。

インピンジメントの2種類の症状

インピンジメントには、肩峰と棘上筋間で肩峰下包が挟まれるエクスターナルインピンジメントと、棘上筋の関節包面が後上方関節唇と衝突するインターナルインピンジメントの2種類の症状があります。両方とも肩甲上腕リズム(肩甲骨と上腕骨の動き)の異常が原因となっているケースが多いです。
特にインターナルインピンジメントはSLAP(関節唇損傷)という症状になることもあるので特に注意が必要です。

肩甲上腕リズムの異常は、外転と水平伸展の2つの動きをチェックします。
チェックするポイントは、外転時に肩甲骨の上方回旋と後傾が起きているか?(肩甲骨の挙上が早く起きすぎていないか?)と、水平伸展時に肩甲骨の内転と下制が起きているか?(肩甲平面と上腕骨長軸がずれていないか?)です。

外転時の肩甲上腕リズムの異常はエクスターナルインピンジメントを引き起こし、水平伸展時の肩甲上腕リズムの異常はインターナルインピンジメントを引き起こします。

インピンジメントにならない為に!!

トレーニング&治療法!

必ずインナーマッスルを鍛えること

インナーマッスルは肩の関節のぶれを起こさないようにする筋肉です(肩の安定性を保つ)

ボールを投げすぎて腱板を疲労させない

ボールを投げすぎると腱板は疲労して肩をささえる力が弱くなり、肩がぶれてインピンジを起こしやすくなります。
(特にピッチャーやキャッチャーはボールを投げる機会が多いので、腱板が弱ってインピンジメント症候群になりやすい傾向にあります。)

実際、野球をしている子の肩の診察をすると、腱板、特に棘上筋(きょくじょうきん)棘下筋(きょくかきん)の筋力が弱っている選手をよく見かけます。

トレーニング&治療法!

では、インピンジメント症候群にならないためには、弱っている腱板を鍛えるインナーマッスルトレーニングだけを行えばよいのでしょうか?

実はそんなに単純なものではありません。腱板の筋肉は肩甲骨から出てくる筋肉です。
例えれば、土台である肩甲骨が不安定だとうまく腱板を鍛えることはできません。ぐらぐらした土台(肩甲骨)の上で腕立て伏せ(腱板訓練)をしているようなものです。

ですから腱板を鍛えるには、まず肩甲骨周囲の筋肉トレーニングをして、肩甲骨がしっかりするようになったら腱板の訓練をすることが大切なのです。

インナーマッスル・肩甲骨の安定性だけを良くしても十分とはまだ言えません!!
もっと上を目指すなら肩のコンディショニングだけではなく、股関節や背部の柔軟性の向上をして頂くと最高です。

今回は少し難しい説明が多かったと思いますが、これからの野球少年・高校球児このような症状にならないように!!
なってしまったらすぐに治療が出来るように!!
早期発見・早期治療が一番の近道なのでなにかあればお手伝いさせて頂きます。

関節唇損傷(SLAP)野球・バレーボールに多い障害

関節唇損傷とは、肩関節を補強している関節唇という軟骨組織が損傷する疾患です。
関節唇はスポーツ動作などで腕に無理な動きが加わり動きを強制された際や、転倒などの際に脱臼などと一緒に損傷することがあるほか、野球やバレーボールなど、腕を頻繁に挙上するスポーツで使いすぎにより生じることもあります。

最近では斉藤祐樹投手もこの障害で悩まされ復帰されました。野球・バレーボールなどのオーバーハンドの競技には本当に大変な症状だと思います。

関節唇とは?

肩関節を構成する骨は上腕骨頭と呼ばれるボウル状の関節頭と肩甲骨の浅いお皿のような関節窩との組み合わせでできています。
その表面には関節軟骨があり、周囲を関節包によって包まれています。しかし骨が作っている関節窩は浅すぎてそのままでは肩関節はすぐに脱臼する状態です。

そこでこの窩の周囲に腱のような丈夫な土手のように覆っている線維性の組織で、膝でいえば半月板のようなものです。。これを関節唇と呼びます。

どんな症状が出るのか?

関節唇が損傷を受けると、肩関節の可動範囲が狭くなったり、関節を動かすときに、引っかかるような、つかえるような感党が起きたりします。
当然、痛みも伴います。投球動作では、振りかぶってから腕が後方にねじられるときに、症状が出やすいようです。

そのため、速球が投げられなくなったり、遠投ができなくなったりします。関節唇が骨を支えられなくなると、脱臼しそうな不安感を自覚することもあります。

どんな治療をすればいいか?

肩を休めることではがれた関節唇が付くことはありませんが、痛みが軽快することがあります。(まずは痛みが感じられた時は投球や痛みのある動きを中止する事)、肩甲骨周囲の筋力訓練、インナーマッスルエクセサイズを行い肩の安定性を高めてあげます。

痛みが強ければ、痛み止めの薬を処方し、炎症止めの注射をすることもあります。しかしこのような保存治療を行っても症状が改善されなければ手術をしてはがれた関節唇を縫合します。

基本的なインナートレーニング

本当に基本的なトレーニングのメニューだけですが参考にしてみて下さい。

投球傷害でお困りの方・お身体のメンテナンスなどについて詳しく知りたい方はお気軽にお問い合わせ下さい。

上腕骨上端部骨端線離開(リトルリーガーズショルダー)

投球傷害 成長期(10~15才)に多い症状

いわゆる野球肩は、成長期でも成人でも起こりますが、その痛みの本態は別のものとなります。成長期では、上腕骨上端部の成長軟骨に障害が起こり、肩の痛みを発生します。
一方成人の骨格 の場合では、肩関節の周囲を補強する靱帯や筋肉、腱などの障害により痛みが発生します。従って、成長期に起こる野球肩をリトルリーガーズショルダーといいます。

成長期の野球肩は、上記の通り、上腕骨上端部の成長軟骨に起こる骨端症(こったんしょう)もしくは成長軟骨の疲労骨折(骨端線離開)が多いです。

上腕骨の骨端症と骨端線離開の違い

レントゲンなどの検査で、明確な成長軟骨の損傷がみられない場合は、骨端症もしくは骨端炎と診断されます。一方、成長軟骨やその隣接する骨に損傷がみられ、いわゆるひびや骨折状態であれば、完全な離断が無くても骨端線離開と診断されます。

単純な骨端症(骨端炎)でも、実際には成長軟骨の細かな「ひび」などの微細損壊が存在する場合が多く、その状態で新たに強い外力を受けると骨折や離開を起こす確立が高くなります。従って、骨端症を生じたら、炎症が治まるまで安静にすることが大切です。
無理をして悪化させると結果的に復帰時期が大幅に遅れることとなります。

なぜそのような症状が起こるのか?

一般的にはオーバーユース(使いすぎ)コンディショニング不足に関係してくるものが多いと思われます。

柔軟性の低下

筋機能の問題

投球フォームの問題

主な原因とは

野球などによる投球動作で、上腕骨にかかる捻りのストレスと投げ込むときに起こる上肢末梢方向への遠心力(牽引力)が主な原因となります。

投球をする際、上腕を後方に引きながら外旋という捻りの動作を行っています。さらに投げ込むときに、上腕はほぼ最大外旋位から一気に内旋という捻りをしながら前方に振り下ろしていきます。
この上腕の内旋、外旋という回旋動作と、腕を振り下ろす際に起こる遠心力で上肢を末梢方向への引っ張る力、さらにその動作を行う際に働く筋肉の張力による負荷が、上腕上端部の骨端線(成長軟骨)部分に作用します。

骨端線は、骨本体よりも耐久力が弱いため、耐久力の限度を超える投球動作を繰り返すことにより疲労性のストレスが蓄積され徐々に損壊していきます。

※【上腕の回旋運動】上腕の回旋運動は、上腕の正面を基準に外へ捻る動作を外旋(がいせん)、内へ捻る動作を内旋といいます。

この様な症状には注意

①投球動作時の疼痛

初めは、この投球動作時だけの痛みであることが多いようです。その他の日常動作ではほとんど痛みがでないのですが、損傷が進行していくと日常の 動作でも痛みを訴えるようになります。痛みの範囲は、肩関節を中心に肩甲骨や鎖骨周囲、上腕外側にみられます。

②上腕の他動的回旋運動で疼痛を誘発

上腕の内旋、外旋運動を他動的に強制すると強い痛みを訴えます。

③骨端線(成長軟骨)に一致した限局性圧痛

上腕上端部の成長軟骨に沿って圧痛(患部を手指で圧迫することで誘発する疼痛)を触知できます。

④肩関節周囲筋肉の萎縮

発症初期は見られませんが、症状が進行するとともに、肩周囲筋肉の萎縮を起こす場合があります。特に肩の後方の筋肉が萎縮する事が多いです。

どのように治療したらいいか?

骨端線のずれはそれほど大きいものではないので、投球を一時休止して肩の安静を保ちまずは炎症を抑えることを最優先に考えましょう。
炎症を抑えるには必ずアイシング!
物理療法での炎症症状を軽減させてあげる事も大切です。また肩および肩甲骨周囲の手技療法や物理療法、筋力トレーニングやストレッチをすることで復帰後も再発をしないようにしていかないといけません。
肩に負担がかかり易い投げ方をしている場合には、正しいフォームに修正することもあります。

投球障害ブログ

代表取締役 長島 裕二

代表取締役 長島 裕二

代表経歴

  • 日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー
    鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師
  • 阪神タイガーストレーナー(1982〜1998)
  • 関目病院リハビリテーション科(1999〜2002)
  • N.Y.メッツ新庄剛志選手治療のため渡米(2001)
  • 立命館大学硬式野球部(2001)
  • A.T.長島治療院開院(2002)
  • 株式会社A.T.NAGASHIMA設立(2003)
  • 日本プロ野球トレーナーOB協会副会長就任
  • 履正社医療スポーツ専門学校 非常勤講師(2007〜)
  • (株)コンディショニング・プロデュース・ジャパン代表取締役就任(2008)